2023-03-22 Wed
来たる3月25日にこんなイベントをやります。
元々翻訳家の森田義信さんと僕でお互いの本の発行を記念してトークでもやりましょうかという緩い企画だったのですが、なんと急遽ニューオーリンズから帰国中の山岸潤史さんが参加してくれることとなりました。
ということで、山岸さんを主賓に迎えて、あれこれと語りつつ、音楽をかけていきたいと思っております。コロナ流行後のニューオーリンズの様子なども山岸さんから聞くつもりです。
あと、ヒューイ伝にも書かれていますが、山岸さんはヒューイと一度リハーサルで共演したことがあり、そのときのこともぜひぜひご本人から聞きたいです。
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2023年3月25日(土) 19:00開場 20:00開演
三鷹・南風酒場バイユーゲイト
http://bayougate.voxx.jp/
『ヒューイ・”ピアノ"・スミス伝』&『ハイ・フィディリティ新装版』出版記念
陶守正寛×森田義信 DJ&トークショー
Special Guest:山岸潤史(from New Orleans)
料金:1,000円
楽しい音楽をかけながら本を語る、ニューオーリンズを語る...本の販売もします
http://bayougate.voxx.jp/
『ヒューイ・”ピアノ"・スミス伝』&『ハイ・フィディリティ新装版』出版記念
陶守正寛×森田義信 DJ&トークショー
Special Guest:山岸潤史(from New Orleans)
料金:1,000円
楽しい音楽をかけながら本を語る、ニューオーリンズを語る...本の販売もします
2023-03-19 Sun
いまさらというくらい遅くなりましたが、2022年に出た新譜の個人的なベスト10です。
2022年は特に後半、ヒューイ・スミスの本の準備作業に没頭していたこともあり新譜はさほど多く聴かなかったように思います。その代わりヒューイ周辺の音は徹底的に聴きましたけど(笑)。
そんな中、特に印象に残った新譜10選です。順不同です。
2022年は特に後半、ヒューイ・スミスの本の準備作業に没頭していたこともあり新譜はさほど多く聴かなかったように思います。その代わりヒューイ周辺の音は徹底的に聴きましたけど(笑)。
そんな中、特に印象に残った新譜10選です。順不同です。
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Tommy McLain / I Ran Down Every Dream (MSI MSIG 1504)
2022年、一番インパクトがあったのはこれでした。前作から40年以上、齢80を超えたトミー・マクレインの新譜が出るとは予想していなかったので、びっくり。しかも年齢を感じさせせないみずみずしさと、年齢を重ねたからこその奥深さを兼ね備えた内容にはやられました。エルヴィス・コステロなどの参加によって、かなり注目されましたが、それを抜きにしても十分聴く価値のある作品だと思います。スワンプポップというジャンルをメジャーに持ち上げた功績も大きいです。
2022年、一番インパクトがあったのはこれでした。前作から40年以上、齢80を超えたトミー・マクレインの新譜が出るとは予想していなかったので、びっくり。しかも年齢を感じさせせないみずみずしさと、年齢を重ねたからこその奥深さを兼ね備えた内容にはやられました。エルヴィス・コステロなどの参加によって、かなり注目されましたが、それを抜きにしても十分聴く価値のある作品だと思います。スワンプポップというジャンルをメジャーに持ち上げた功績も大きいです。

Edgar Winter / Brother Johnny (Quarto Valley QVR 0149)
ジョニー・ウィンターが亡くなってから8年。生前も度々共演をしていた弟のエドガーが正面からジョニーの作品に取り組んだトリビュートです。いかにもありそうな企画ではありますが、参加ミュージシャンも含め、ジョニーへの愛情が溢れる内容で聴いていてうるるっときました。また、アルバムにはエドガー自身がこのアルバム制作にいたった過程を丁寧に書き連ねたブックレットがついており、当初このような企画は今一つ乗り気になれなかったことなどが綴られています。ただのカバー集ではない情熱が感じられる作品です。真正面に彼がジョニーの曲をやると、やはり兄弟。一瞬ジョニーが蘇ったかのような錯覚にもみまわれました。

Wild Chillun / 浮浪 (P-Vine PCD-27064)
W.C.カラスのワイチルのPヴァインからの二作目。バリバリにロックしていた前作よりも肩の力が抜けた自然体なサウンドに聞こえます。カラスのオリジナル曲も彼の独特の世界観があって面白く、そしてかっこいいです。

Diunna Greenleaf / I Ain’t Playin’ (Little Village Foundation LVF 1045)
ブルースの新譜としては、2022年の作品としてはピカいちだったように思います。ゴスペル、ソウル色が程よくブレンドされたサウンドでダイユーナの存在感のあるヴォーカルはパワフルかつしなやかさもあって、すっと耳に馴染みました。ジェリー・ジェモットをはじめとする参加メンバーの豪華さと安定感も特筆に値します。

Dr. John / Things Happen That Way (Concord 7242743)
2019年に亡くなったドクター・ジョンが生前に完成させていたラスト・アルバム。ドクターが亡くなってから、遺族主導で一部手直しがされたため、発売までに3年を要しています。近年の彼の作品と比べると尖がったところはないですが、しみじみと染み入る味わい深い作品だと思います。ただ、丸々バックのバンドが差し替えられたWalk On Guilded Splintersついては、違和感こそないもののそこまでする必要性があったのかは疑問が残ります。

Keb’ Mo’ / Good To Be… (Rounder 1166101542)
この人は本当に好きです。いい曲書きますよね。派手さは何もないですが、癒しの音楽というか、聴けば聴くほど愛着の沸く作品です。アクースティック・ギターの響きがいいんですよね。ビル・ウィザーズのカヴァーLean On Meも素晴らしい出来です。

The Bigood! - #Swing Jug (No label, no number)
前作から随分時間がかかりましたが、待った甲斐のある作品です。相変わらず弾けんばかりの楽しさ。ライヴで聴いていたレパートリーも入っていてまたライヴが見たくなりますね。

Buddy Guy - Blues Don’t Lie (Sony Music/Silvertone SICP 6492)
86歳にしてこの元気さは凄いを通り越して異常ではないでしょうか。1990年代以降の彼の作品はマンネリ感もあって個人的には食傷気味なときもありましたが、これは痛快な出来栄えです。弾きまくるギターもテンションは落ちていません。

藤井"ヤクハチ"康一 - Ukulele Jive vol. 2 (House of Jive HOJ-UJ-2202)
ヒューイ伝出版記念イベントでも演奏してくれた藤井さん。ウクレレ・アルバム第二弾はニューオーリンズ編。アラン・トゥーサンの美しいバラードWith You In Mindやアート・ネヴィルの初期の名曲Zing Zingなどニューオーリンズ好きならくすぐられる選曲。藤井さんオリジナルのBon Temps Roule, New Orleans!の再演もイントロでミーターズ・ネタが入っていたるところが面白い。芸人魂いっぱいの藤井さんの快作です。

Stan Mosley / No Soul No Blues (P-Vine PCD-25354)
ダイヤルトーンのエディ・スタウトと日暮さん、高地さんの入魂の新譜。ちょっと力みすぎている感もありますが、聴き応えのある現在進行形のブルース&ソウル作でした。
2023-02-24 Fri
2月25日、ブルース&ソウル・レコーズ170号が発売となります。今回の特集記事には僕は書いていないのですが、「ブルースこの人この一曲」、興味深いですね。編集部で選んだ是非聴いてもらいたいブルースの名曲33選。1曲あたり2ページを使ってライター各氏が解説します。100年以上に及ぶブルースの歴史の中で、取り上げる楽曲を絞るのは無茶と言えば無茶ですが、そのチョイスに雑誌の個性を感じることができるのではないでしょうか。
僕は今回、12月22日に亡くなったニューオーリンズのギタリスト、ウォルター・“ウルフマン”・ワシントンの訃報記事を書きました。2ページに渡って彼のキャリアをについて振り返ったほか、代表的な8枚のアルバムも紹介しています。考えてみれば、彼が亡くなった頃はヒューイ伝のことなどでばたばたしていたせいもあり、このブログでは訃報すら書いておりませんでした。ちょっと間があきましたがBSRの記事で追悼したいと思います。
ヒューイ・スミスの訃報が飛び込んで来たのは本号の脱稿直後だったため、今回はニュース欄でそのことには触れておりません。恐らく次号で何らかの形で取り上げられるのではないかと思います。本誌のウェブサイトでは、既にニュースとして取り上げています。そこには情報提供の協力をさせてもらいました。
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ブルース&ソウル・レコーズ 第170号
2023年2月25日発売
定価: 1,800円+税(税込1,980円)
表紙 ハウリン・ウルフ
特集 ブルースこの人この一曲
広く知られる人気曲、歴史を変えた重要曲、静かに愛される隠れた傑作。ブルース史に残る33曲を選出し、紹介します。これからも聞かれ続けてほしいブルース名曲ガイドです。
[小出 斉/妹尾みえ/日向一輝/やすだあきよし/ワダマコト/濱田廣也]
*登場曲(抜粋)
〈フロイドのギター・ブルース〉(アンディ・カーク&ヒズ・12クラウズ・オブ・ジョイ)
〈ディーコンズ・ホップ〉(ビッグ・ジェイ・マクニーリー)
〈フォーティ・フォー〉(ハウリン・ウルフ)
〈ゾーズ・ロンリー・ロンリー・ナイツ〉(アール・キング)
〈ウィリー・アンド・ザ・ハンド・ジャイヴ〉(ザ・ジョニー・オーティス・ショー)
〈シー・シー・ベイビー〉(フレディ・キング)
〈レイニン・イン・マイ・ハート〉(スリム・ハーポ)
〈ドント・アンサー・ザ・ドア〉(B.B.キング)
〈サムバディ(ローン・ミー・ア・ダイム)〉(フェントン・ロビンスン)
〈ドラウニング・オン・ドライ・ランド〉(アルバート・キング)
ほか、全33曲
【その他の主な記事】
● “ブロードウェイシネマ”『ビリー・ホリデイ物語』2023年3月10日(金)より、全国順次限定公開[井村 猛]
● 黒人コミュニティの中で掴んだコール&レスポンスの本質──ブラッデスト・サキソフォン、ルイジアナ〜テキサスを行く[甲田ヤングコーン伸太郎 (Bloodest Saxophone)]
● [フィリー・ソウルを探る連続企画]PHILADELPHIA SOUL with BROTHERLY LOVE[林 剛]
第1回 トム・ベルは永遠に
*[コラム]リサイクルされ続けるトム・ベルの名曲
*トム・ベルの仕事 アルバム13選
● シカゴ・ソウル名匠が愛でた女性3人組ラヴライツの傑作がCD化──クラレンス・ジョンスン・プロデュース・アルバム7選[森田 創]
● カントリー・ブルース・ファン注目!《マッチボックス・ブルースマスター》シリーズ第8弾[みなべかん]
● 女性ゴスペル・グループの魅力を凝縮したスーパー・グループ、キャラヴァンズ[高橋 誠]
● 穴居人、半魚人、尻シスターズ。ジミー・キャスター・バンチが歩んだノヴェルティ・ファンクの道[丸屋九兵衛]
● ホイットニー・ヒューストン──入門に最適なシングル&映像集[有賀竜裕]
● パトリース・ラッシェン珠玉のエレクトラ期 [小渕 晃]
● [追悼] ウォルター “ウルフマン” ワシントン──ファンキーでソウルフル、ニューオーリンズのヴェテラン・ギタリスト[陶守正寛]
● [追悼] フレディ・ルーレット──異世界へと連れて行くスティール・ギターの鬼才[小出 斉]
● [新作アルバム・リヴュー]ジャニス・ジョプリン/リー・フィールズ/ルーシー・フォスター/マキシン・ブラウン 他
【連載】
☆ 永井ホトケ隆 好評連載「Fool’s Paradise」第18回
☆ KEEP ON KEEPIN’ ON ソウル/ファンク名盤のメッセージを読む 第13回 『レイ・チャールズ/レイ・チャールズ』/中田 亮
☆ SONS OF SOUL/林 剛
☆ ゴナ・ヒット・ザ・ハイウェイ〜西海岸と南部を結ぶ「I-10」沿道音楽巡り/日向一輝
☆ なんてったってインディ・ソウル 蔦木浩一×齋藤雅彦×編集部H
☆ フード・フォー・リアル・ライフ 〜歌詞から見るブルース&ソウルの世界/中河伸俊
☆ 小出斉の勝手にライナーノーツ「GREY GHOST」
☆ リアル・ブルース方丈記/日暮泰文
☆ 鈴木啓志のなるほど! ザ・レーベル VOL.99 「Heat」
☆ ゴスペル・トレイン「ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピのリード・シンガー(2)」/佐々木秀俊+高橋 誠
☆ BLUES IS MY BUSINESS no.246/吾妻光良
☆ いづみやの曲追い酩酊談/佐々木健一
☆ 原田和典の魂ブチ抜き音楽
☆ 文聞堂書房〜古書掘りコラム/出田 圭
☆ ICHIのチタリン・サーキット最前線
☆ International Music Stroll〜世界の音楽にぷらりと出会おう/ワダマコト
☆ すべてこの世はブルースかも/辻昌志
☆ ニッポンの。国内アーティスト新譜紹介/妹尾みえ
☆ ブルース&ソウルが流れる店/轟美津子/スカンクちかの
☆ Ain’t That Good News 国内ライヴ/イヴェント情報ほか
僕は今回、12月22日に亡くなったニューオーリンズのギタリスト、ウォルター・“ウルフマン”・ワシントンの訃報記事を書きました。2ページに渡って彼のキャリアをについて振り返ったほか、代表的な8枚のアルバムも紹介しています。考えてみれば、彼が亡くなった頃はヒューイ伝のことなどでばたばたしていたせいもあり、このブログでは訃報すら書いておりませんでした。ちょっと間があきましたがBSRの記事で追悼したいと思います。
ヒューイ・スミスの訃報が飛び込んで来たのは本号の脱稿直後だったため、今回はニュース欄でそのことには触れておりません。恐らく次号で何らかの形で取り上げられるのではないかと思います。本誌のウェブサイトでは、既にニュースとして取り上げています。そこには情報提供の協力をさせてもらいました。
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ブルース&ソウル・レコーズ 第170号
2023年2月25日発売
定価: 1,800円+税(税込1,980円)
表紙 ハウリン・ウルフ
特集 ブルースこの人この一曲
広く知られる人気曲、歴史を変えた重要曲、静かに愛される隠れた傑作。ブルース史に残る33曲を選出し、紹介します。これからも聞かれ続けてほしいブルース名曲ガイドです。
[小出 斉/妹尾みえ/日向一輝/やすだあきよし/ワダマコト/濱田廣也]
*登場曲(抜粋)
〈フロイドのギター・ブルース〉(アンディ・カーク&ヒズ・12クラウズ・オブ・ジョイ)
〈ディーコンズ・ホップ〉(ビッグ・ジェイ・マクニーリー)
〈フォーティ・フォー〉(ハウリン・ウルフ)
〈ゾーズ・ロンリー・ロンリー・ナイツ〉(アール・キング)
〈ウィリー・アンド・ザ・ハンド・ジャイヴ〉(ザ・ジョニー・オーティス・ショー)
〈シー・シー・ベイビー〉(フレディ・キング)
〈レイニン・イン・マイ・ハート〉(スリム・ハーポ)
〈ドント・アンサー・ザ・ドア〉(B.B.キング)
〈サムバディ(ローン・ミー・ア・ダイム)〉(フェントン・ロビンスン)
〈ドラウニング・オン・ドライ・ランド〉(アルバート・キング)
ほか、全33曲
【その他の主な記事】
● “ブロードウェイシネマ”『ビリー・ホリデイ物語』2023年3月10日(金)より、全国順次限定公開[井村 猛]
● 黒人コミュニティの中で掴んだコール&レスポンスの本質──ブラッデスト・サキソフォン、ルイジアナ〜テキサスを行く[甲田ヤングコーン伸太郎 (Bloodest Saxophone)]
● [フィリー・ソウルを探る連続企画]PHILADELPHIA SOUL with BROTHERLY LOVE[林 剛]
第1回 トム・ベルは永遠に
*[コラム]リサイクルされ続けるトム・ベルの名曲
*トム・ベルの仕事 アルバム13選
● シカゴ・ソウル名匠が愛でた女性3人組ラヴライツの傑作がCD化──クラレンス・ジョンスン・プロデュース・アルバム7選[森田 創]
● カントリー・ブルース・ファン注目!《マッチボックス・ブルースマスター》シリーズ第8弾[みなべかん]
● 女性ゴスペル・グループの魅力を凝縮したスーパー・グループ、キャラヴァンズ[高橋 誠]
● 穴居人、半魚人、尻シスターズ。ジミー・キャスター・バンチが歩んだノヴェルティ・ファンクの道[丸屋九兵衛]
● ホイットニー・ヒューストン──入門に最適なシングル&映像集[有賀竜裕]
● パトリース・ラッシェン珠玉のエレクトラ期 [小渕 晃]
● [追悼] ウォルター “ウルフマン” ワシントン──ファンキーでソウルフル、ニューオーリンズのヴェテラン・ギタリスト[陶守正寛]
● [追悼] フレディ・ルーレット──異世界へと連れて行くスティール・ギターの鬼才[小出 斉]
● [新作アルバム・リヴュー]ジャニス・ジョプリン/リー・フィールズ/ルーシー・フォスター/マキシン・ブラウン 他
【連載】
☆ 永井ホトケ隆 好評連載「Fool’s Paradise」第18回
☆ KEEP ON KEEPIN’ ON ソウル/ファンク名盤のメッセージを読む 第13回 『レイ・チャールズ/レイ・チャールズ』/中田 亮
☆ SONS OF SOUL/林 剛
☆ ゴナ・ヒット・ザ・ハイウェイ〜西海岸と南部を結ぶ「I-10」沿道音楽巡り/日向一輝
☆ なんてったってインディ・ソウル 蔦木浩一×齋藤雅彦×編集部H
☆ フード・フォー・リアル・ライフ 〜歌詞から見るブルース&ソウルの世界/中河伸俊
☆ 小出斉の勝手にライナーノーツ「GREY GHOST」
☆ リアル・ブルース方丈記/日暮泰文
☆ 鈴木啓志のなるほど! ザ・レーベル VOL.99 「Heat」
☆ ゴスペル・トレイン「ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピのリード・シンガー(2)」/佐々木秀俊+高橋 誠
☆ BLUES IS MY BUSINESS no.246/吾妻光良
☆ いづみやの曲追い酩酊談/佐々木健一
☆ 原田和典の魂ブチ抜き音楽
☆ 文聞堂書房〜古書掘りコラム/出田 圭
☆ ICHIのチタリン・サーキット最前線
☆ International Music Stroll〜世界の音楽にぷらりと出会おう/ワダマコト
☆ すべてこの世はブルースかも/辻昌志
☆ ニッポンの。国内アーティスト新譜紹介/妹尾みえ
☆ ブルース&ソウルが流れる店/轟美津子/スカンクちかの
☆ Ain’t That Good News 国内ライヴ/イヴェント情報ほか
2023-02-19 Sun
メンフィスのヴェテラン・ソウル・シンガー、スペンサー・ウィギンズ(Spencer Wiggins)が2月13日に亡くなってしまいました。81歳でした。弟でソウル・シンガーのパーシー・ウィギンズが発表しています。死因は明らかにされていませんが、近年は認知症に加え臓器不全など健康上の問題を抱え、メンフィス市内の病院に入院していました。
スペンサーは1960年代にゴールドワックス・レーベルから名作シングルの数々をリリース。そのディープで迫力のある歌いっぷりで、多くのファンを魅了しました。2017年4月にはパーシーと共に来日も果たし、ビルボードライブ東京で公演を行なっています。
スペンサー・ウィギンズは1942年1月8日、メンフィス生まれ。母親は地元のバプテスト教会のクワイヤーで歌う歌手で、スペンサーも同じ道を進むようになりました。高校在学時に彼はパーシーや姉のマクシン・ウィギンズとニュー・ライヴァル・ゴスペル・シンガーズを結成し活動。そして高校を卒業したのちの1961年にはメンフィスのクラブ・シーンでソウルを歌うようになりました。
ソウル歌手として活動するようになって数年が経った頃、スペンサーのパフォーマンスを目にして声をかけた人がいました。彼の名前はクイントン・クランチ。1964年にゴールドワックス・レコードを設立したレコード・プロデューサーです。彼はスペンサーの才能を認め、ゴールドワックスに迎え入れたのでした。
1965年、ゴールドワックス傘下のバンドスタンドUSAから"Lover's Crime”でシングル・デビュー。飛び切りソウルフルなブルースで圧巻の歌声を聴かせています。その後1969年にゴールドワックスが閉鎖するまで在籍し、合計8枚のシングルをリリースしました。
1969年、今度はフェイムと契約したものの、リリースしたのはシングル2枚のみ。しかし、うち1枚”Double Lovin’”は1970年9月にR&Bチャートの44位を記録するヒットとなっています。続いてサウンズ・オヴ・メンフィスおよびXLレーベルからシングルをリリースしていますが、これらはヒットとはならず、"Double Lovin'"はスペンサーにとって唯一チャート入りした曲として歴史に刻まれたのでした。
1973年にはスペンサーは住みなれた故郷メンフィスを離れマイアミに移住しました。マイアミでは、バプテスト教会でクワイヤーを率いて活動をしていたようですが、ソウル・シーンからは姿を消してしまいました。しかしその後1977年に日本のヴィヴィドサウンドよりゴールドワックスのシングル音源が「Soul City U.S.A.」と題したLPでリリースされ、スペンサーに対する再評価が高まっていったのでした。
スペンサーは1960年代にゴールドワックス・レーベルから名作シングルの数々をリリース。そのディープで迫力のある歌いっぷりで、多くのファンを魅了しました。2017年4月にはパーシーと共に来日も果たし、ビルボードライブ東京で公演を行なっています。
スペンサー・ウィギンズは1942年1月8日、メンフィス生まれ。母親は地元のバプテスト教会のクワイヤーで歌う歌手で、スペンサーも同じ道を進むようになりました。高校在学時に彼はパーシーや姉のマクシン・ウィギンズとニュー・ライヴァル・ゴスペル・シンガーズを結成し活動。そして高校を卒業したのちの1961年にはメンフィスのクラブ・シーンでソウルを歌うようになりました。
ソウル歌手として活動するようになって数年が経った頃、スペンサーのパフォーマンスを目にして声をかけた人がいました。彼の名前はクイントン・クランチ。1964年にゴールドワックス・レコードを設立したレコード・プロデューサーです。彼はスペンサーの才能を認め、ゴールドワックスに迎え入れたのでした。
1965年、ゴールドワックス傘下のバンドスタンドUSAから"Lover's Crime”でシングル・デビュー。飛び切りソウルフルなブルースで圧巻の歌声を聴かせています。その後1969年にゴールドワックスが閉鎖するまで在籍し、合計8枚のシングルをリリースしました。
1969年、今度はフェイムと契約したものの、リリースしたのはシングル2枚のみ。しかし、うち1枚”Double Lovin’”は1970年9月にR&Bチャートの44位を記録するヒットとなっています。続いてサウンズ・オヴ・メンフィスおよびXLレーベルからシングルをリリースしていますが、これらはヒットとはならず、"Double Lovin'"はスペンサーにとって唯一チャート入りした曲として歴史に刻まれたのでした。
1973年にはスペンサーは住みなれた故郷メンフィスを離れマイアミに移住しました。マイアミでは、バプテスト教会でクワイヤーを率いて活動をしていたようですが、ソウル・シーンからは姿を消してしまいました。しかしその後1977年に日本のヴィヴィドサウンドよりゴールドワックスのシングル音源が「Soul City U.S.A.」と題したLPでリリースされ、スペンサーに対する再評価が高まっていったのでした。
2003年にはゴスペルのアルバム「Key To The Kingdom」をリリースし健在ぶりをアピール。そして2009年と2011年にはイタリアのポレッタ・ソウル・フェスティバルに出演し久々にソウル・ショーを行ないました。その様子は動画で公開され、長い歳月を経てなお彼がソウル・シンガーとしてバリバリ現役であることを知らしめたのです。そんな流れの中、英ケント・レーベルからは、未発表曲も加えた形でゴールドワックス、フェイム、XLの音源がコンピレーションでリリースされました。
そして2017年、遂にスペンサーは初来日を果たします。目の前に登場した彼はポレッタの映像と比べるとだい老け込んだ印象はありましたが、歌い出すとその説得力たるや他の追随を許さない味を感じさせました。
スペンサー&パーシー・ウィギンズ初来日公演レポート
(ビルボードライブ東京, April 18, 2017)
http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1734.html
残念ながら、これが唯一の来日公演となってしまいましたが、日本のソウル・ファンにとってはまさに長年の待望の来日でした。
弟パーシーとはわずか1歳の歳の差ですが、軽い足取りで若々しかったパーシーと比べ、スペンサーは対照的に歩くのも苦しそうでした。もしかすると、6年前なので、まだ75歳でしたが、もうあの頃から健康問題を抱えていたのかもしれません。
せっかくソウル・シーンにカムバックしたのだから、カムバック作を出してほしかったなと言う思いもありますが、一度だけでもその姿を目撃できたのは貴重な体験でした。
残念ながら、これが唯一の来日公演となってしまいましたが、日本のソウル・ファンにとってはまさに長年の待望の来日でした。
弟パーシーとはわずか1歳の歳の差ですが、軽い足取りで若々しかったパーシーと比べ、スペンサーは対照的に歩くのも苦しそうでした。もしかすると、6年前なので、まだ75歳でしたが、もうあの頃から健康問題を抱えていたのかもしれません。
せっかくソウル・シーンにカムバックしたのだから、カムバック作を出してほしかったなと言う思いもありますが、一度だけでもその姿を目撃できたのは貴重な体験でした。
2023-02-16 Thu
Huey performing with the Clowns at Tipitina’s, 1979.
Photograph by Michael P. Smith, © The Historic New Orleans Collection,
2007.0103.1.801, Negative 5A
Photograph by Michael P. Smith, © The Historic New Orleans Collection,
2007.0103.1.801, Negative 5A
ヒューイ・”ピアノ”・スミスが2月13日夜、バトンルージュの自宅で就寝中に亡くなったそうです。
昨日、起きてスマホを見たら、ヒューイの長女アケリンさんからそのことを知らせるメッセージが入っていました。ヒューイ伝の著者ジョン・ワートさんと僕宛に「昨晩お父さんが亡くなりました。私たちと人生を共にしてくれてありがとう」と。
呆然としました。僕は、ヒューイ伝の日本語版を彼の存命なうちに出したいと動き、それはなんとか昨年11月に実現することができましたが、まさかこんなにすぐのお別れになるとは!
ヒューイは高齢(89歳)ではありましたが病気だったわけではなく、突然の訃報でした。アケリンさんもニューオーリンズ在住で離れて暮らしているため、死に目に会うことはできなかったそうです。穏やかな最期だったとのことでそれはせめてもの救いだと思いますが、涙があふれてきます。彼が元気なうちに会いに行けないか模索もしておりましたが、もう叶いません。
ニューオーリンズR&Bをつくった男、間違いなく確固たる個性を持った偉大な人でした。
ヒューイは、ニューオーリンズR&Bはもとより、20世紀のポピュラー音楽を形作ったキーマンのひとりだと思いますが、その割にはあまりにも知られていません。正当な評価がなされているとは思えないのです。僕がこの本を出したいと考えたのも彼のことをもっと知ってほしいと思ってのことでした。
僕自身、この本を読んで初めて知ることが多かったのです。ヒューイの死に便乗して商売をするようで気が引けますが、ヒューイ伝を是非多くの人に読んでもらいたいと思っています。図書館で借りてもいいです。現時点で全国20か所の図書館に入っています。
ヒューイは1934年1月26日、ニューオーリンズに生まれ、10代の頃から音楽活動を始めました。1953年にサヴォイ・レコードからシングル” You Made Me Cry”でデビュー。これは大きなヒットとはなりませんでしたが、1956年にエイス・レコードに移り、1957年の”Rocking Pneumonia And The Boogie Woogie Flu”を始め、のちのスタンダートとなる曲を連発しました。底抜けに楽しいヒューイ・スミス・アンド・ザ・クラウンズのサウンドは、アラン・トゥーサンやドクター・ジョンを始めとするミュージシャンたちに大きな影響を与え、ニューオーリンズ・サウンドの土台となりました。
1960年代はエイスからインペリアル、インスタントと移籍して活動を続けましたが、ヒューイは彼の母親が信仰していたエホバの証人への信仰を強めていき、それに伴い1970年代に入ると活動のペースは落ちていきました。それでも、1978年に新作アルバムのレコーディング(1981年に英チャーリーより『Rockin' & Jivin'』としてリリース)、1978年、1979年、1981年とニューオーリンズのティピティーナスで公演。ジャズフェスにも2回出演するなど活動は続きました。
1981年にバトンルージュに移住。新天地でも活動を模索したもののうまくいかず、その後は完全引退状態となりました。1988年から2000年までの間、ヒューイはロイヤルティ回収を請け負う業者から訴訟を起こされ、敗訴という結末を迎えています。
裁判が終結した2000年、ロックンロール・ファウンデーションによってロックンロール・パイオニア賞を授与されました。ヒューイは、ニューヨークで開催された授賞式に赴き、久々のステージに立っています。しかし、これが彼の生涯最後のステージとなってしまいました。2002年にツアーの企画が持ち上がったものの実現はせず、ニューオーリンズの恒例のピアノ・ナイトへの出演も一度は決まりながら、彼が出演することはありませんでした。
近年もアケリンさんはちょくちょくヒューイのもとを訪れていたのですが、昨年末、日本語版のヒューイ伝と別冊のデータブックを二人で見ながら大いに盛り上がったと教えてくれました。二人とも日本語が読めないのに、本をめくりつつ楽しい時間を過ごしたそうです。彼女のメールには、データブックを眺めるヒューイの写真が添えられていました。
この本を出すにあたり、僕は著者のワートさんやアケリンさん、米国の出版社のLSUプレスの担当者とはやり取りをしていましたが、ヒューイとは連絡の術がなく、彼がどう思っているのか確認できずにおりました。本のあとがきにも書いたのですが、彼には余計なお世話なのかもしれないと思ったこともありました。
しかし、アケリンさんからの報告を受けてこの本を出したことが報われた気がしました。喜んでくれているんだ、と。
ヒューイの生誕90周年となる来年、ニューオーリンズでヒューイ展を企画しようとの話も挙がっていたと聞いています。本人は亡くなってしまいましたが、これはぜひ実現してほしいものです。アケリンさんは、自らを世界一のお父さんのファンだと言ってはばからない人で、ヒューイのレコードや記事などを色々と集めているそうです。彼女のそんなコレクションも展示が実現すれば見ることができるのでしょう。
ヒューイ、素晴らしい音楽をありがとうございました。僕はこれからも彼の素晴らしさを微力ながら伝えていきたいと考えています。
昨日、起きてスマホを見たら、ヒューイの長女アケリンさんからそのことを知らせるメッセージが入っていました。ヒューイ伝の著者ジョン・ワートさんと僕宛に「昨晩お父さんが亡くなりました。私たちと人生を共にしてくれてありがとう」と。
呆然としました。僕は、ヒューイ伝の日本語版を彼の存命なうちに出したいと動き、それはなんとか昨年11月に実現することができましたが、まさかこんなにすぐのお別れになるとは!
ヒューイは高齢(89歳)ではありましたが病気だったわけではなく、突然の訃報でした。アケリンさんもニューオーリンズ在住で離れて暮らしているため、死に目に会うことはできなかったそうです。穏やかな最期だったとのことでそれはせめてもの救いだと思いますが、涙があふれてきます。彼が元気なうちに会いに行けないか模索もしておりましたが、もう叶いません。
ニューオーリンズR&Bをつくった男、間違いなく確固たる個性を持った偉大な人でした。
ヒューイは、ニューオーリンズR&Bはもとより、20世紀のポピュラー音楽を形作ったキーマンのひとりだと思いますが、その割にはあまりにも知られていません。正当な評価がなされているとは思えないのです。僕がこの本を出したいと考えたのも彼のことをもっと知ってほしいと思ってのことでした。
僕自身、この本を読んで初めて知ることが多かったのです。ヒューイの死に便乗して商売をするようで気が引けますが、ヒューイ伝を是非多くの人に読んでもらいたいと思っています。図書館で借りてもいいです。現時点で全国20か所の図書館に入っています。
ヒューイは1934年1月26日、ニューオーリンズに生まれ、10代の頃から音楽活動を始めました。1953年にサヴォイ・レコードからシングル” You Made Me Cry”でデビュー。これは大きなヒットとはなりませんでしたが、1956年にエイス・レコードに移り、1957年の”Rocking Pneumonia And The Boogie Woogie Flu”を始め、のちのスタンダートとなる曲を連発しました。底抜けに楽しいヒューイ・スミス・アンド・ザ・クラウンズのサウンドは、アラン・トゥーサンやドクター・ジョンを始めとするミュージシャンたちに大きな影響を与え、ニューオーリンズ・サウンドの土台となりました。
1960年代はエイスからインペリアル、インスタントと移籍して活動を続けましたが、ヒューイは彼の母親が信仰していたエホバの証人への信仰を強めていき、それに伴い1970年代に入ると活動のペースは落ちていきました。それでも、1978年に新作アルバムのレコーディング(1981年に英チャーリーより『Rockin' & Jivin'』としてリリース)、1978年、1979年、1981年とニューオーリンズのティピティーナスで公演。ジャズフェスにも2回出演するなど活動は続きました。
1981年にバトンルージュに移住。新天地でも活動を模索したもののうまくいかず、その後は完全引退状態となりました。1988年から2000年までの間、ヒューイはロイヤルティ回収を請け負う業者から訴訟を起こされ、敗訴という結末を迎えています。
裁判が終結した2000年、ロックンロール・ファウンデーションによってロックンロール・パイオニア賞を授与されました。ヒューイは、ニューヨークで開催された授賞式に赴き、久々のステージに立っています。しかし、これが彼の生涯最後のステージとなってしまいました。2002年にツアーの企画が持ち上がったものの実現はせず、ニューオーリンズの恒例のピアノ・ナイトへの出演も一度は決まりながら、彼が出演することはありませんでした。
近年もアケリンさんはちょくちょくヒューイのもとを訪れていたのですが、昨年末、日本語版のヒューイ伝と別冊のデータブックを二人で見ながら大いに盛り上がったと教えてくれました。二人とも日本語が読めないのに、本をめくりつつ楽しい時間を過ごしたそうです。彼女のメールには、データブックを眺めるヒューイの写真が添えられていました。
この本を出すにあたり、僕は著者のワートさんやアケリンさん、米国の出版社のLSUプレスの担当者とはやり取りをしていましたが、ヒューイとは連絡の術がなく、彼がどう思っているのか確認できずにおりました。本のあとがきにも書いたのですが、彼には余計なお世話なのかもしれないと思ったこともありました。
しかし、アケリンさんからの報告を受けてこの本を出したことが報われた気がしました。喜んでくれているんだ、と。
ヒューイの生誕90周年となる来年、ニューオーリンズでヒューイ展を企画しようとの話も挙がっていたと聞いています。本人は亡くなってしまいましたが、これはぜひ実現してほしいものです。アケリンさんは、自らを世界一のお父さんのファンだと言ってはばからない人で、ヒューイのレコードや記事などを色々と集めているそうです。彼女のそんなコレクションも展示が実現すれば見ることができるのでしょう。
ヒューイ、素晴らしい音楽をありがとうございました。僕はこれからも彼の素晴らしさを微力ながら伝えていきたいと考えています。