2022年ベスト・アルバム
いまさらというくらい遅くなりましたが、2022年に出た新譜の個人的なベスト10です。
2022年は特に後半、ヒューイ・スミスの本の準備作業に没頭していたこともあり新譜はさほど多く聴かなかったように思います。その代わりヒューイ周辺の音は徹底的に聴きましたけど(笑)。

そんな中、特に印象に残った新譜10選です。順不同です。

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Tommy McLain
Tommy McLain / I Ran Down Every Dream (MSI MSIG 1504)
2022年、一番インパクトがあったのはこれでした。前作から40年以上、齢80を超えたトミー・マクレインの新譜が出るとは予想していなかったので、びっくり。しかも年齢を感じさせせないみずみずしさと、年齢を重ねたからこその奥深さを兼ね備えた内容にはやられました。エルヴィス・コステロなどの参加によって、かなり注目されましたが、それを抜きにしても十分聴く価値のある作品だと思います。スワンプポップというジャンルをメジャーに持ち上げた功績も大きいです。
Edgar Winter
Edgar Winter / Brother Johnny (Quarto Valley QVR 0149)
ジョニー・ウィンターが亡くなってから8年。生前も度々共演をしていた弟のエドガーが正面からジョニーの作品に取り組んだトリビュートです。いかにもありそうな企画ではありますが、参加ミュージシャンも含め、ジョニーへの愛情が溢れる内容で聴いていてうるるっときました。また、アルバムにはエドガー自身がこのアルバム制作にいたった過程を丁寧に書き連ねたブックレットがついており、当初このような企画は今一つ乗り気になれなかったことなどが綴られています。ただのカバー集ではない情熱が感じられる作品です。真正面に彼がジョニーの曲をやると、やはり兄弟。一瞬ジョニーが蘇ったかのような錯覚にもみまわれました。
Wild Chillun
Wild Chillun / 浮浪 (P-Vine PCD-27064)
W.C.カラスのワイチルのPヴァインからの二作目。バリバリにロックしていた前作よりも肩の力が抜けた自然体なサウンドに聞こえます。カラスのオリジナル曲も彼の独特の世界観があって面白く、そしてかっこいいです。
Diunna Greenleaf
Diunna Greenleaf / I Ain’t Playin’ (Little Village Foundation LVF 1045)
ブルースの新譜としては、2022年の作品としてはピカいちだったように思います。ゴスペル、ソウル色が程よくブレンドされたサウンドでダイユーナの存在感のあるヴォーカルはパワフルかつしなやかさもあって、すっと耳に馴染みました。ジェリー・ジェモットをはじめとする参加メンバーの豪華さと安定感も特筆に値します。
Dr John
Dr. John / Things Happen That Way (Concord 7242743)
2019年に亡くなったドクター・ジョンが生前に完成させていたラスト・アルバム。ドクターが亡くなってから、遺族主導で一部手直しがされたため、発売までに3年を要しています。近年の彼の作品と比べると尖がったところはないですが、しみじみと染み入る味わい深い作品だと思います。ただ、丸々バックのバンドが差し替えられたWalk On Guilded Splintersついては、違和感こそないもののそこまでする必要性があったのかは疑問が残ります。
Keb Mo
Keb’ Mo’ / Good To Be… (Rounder 1166101542)
この人は本当に好きです。いい曲書きますよね。派手さは何もないですが、癒しの音楽というか、聴けば聴くほど愛着の沸く作品です。アクースティック・ギターの響きがいいんですよね。ビル・ウィザーズのカヴァーLean On Meも素晴らしい出来です。
The Bigood
The Bigood! - #Swing Jug (No label, no number)
前作から随分時間がかかりましたが、待った甲斐のある作品です。相変わらず弾けんばかりの楽しさ。ライヴで聴いていたレパートリーも入っていてまたライヴが見たくなりますね。
Buddy Guy
Buddy Guy - Blues Don’t Lie (Sony Music/Silvertone SICP 6492)
86歳にしてこの元気さは凄いを通り越して異常ではないでしょうか。1990年代以降の彼の作品はマンネリ感もあって個人的には食傷気味なときもありましたが、これは痛快な出来栄えです。弾きまくるギターもテンションは落ちていません。
Koichi Fujii
藤井"ヤクハチ"康一 - Ukulele Jive vol. 2 (House of Jive HOJ-UJ-2202)
ヒューイ伝出版記念イベントでも演奏してくれた藤井さん。ウクレレ・アルバム第二弾はニューオーリンズ編。アラン・トゥーサンの美しいバラードWith You In Mindやアート・ネヴィルの初期の名曲Zing Zingなどニューオーリンズ好きならくすぐられる選曲。藤井さんオリジナルのBon Temps Roule, New Orleans!の再演もイントロでミーターズ・ネタが入っていたるところが面白い。芸人魂いっぱいの藤井さんの快作です。
Stan Mosley
Stan Mosley / No Soul No Blues (P-Vine PCD-25354)
ダイヤルトーンのエディ・スタウトと日暮さん、高地さんの入魂の新譜。ちょっと力みすぎている感もありますが、聴き応えのある現在進行形のブルース&ソウル作でした。


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音楽全般 | 18:16:34 | コメント(0)
2023年、今年もよろしくお願いします。
遅ればせながら今年もよろしくお願いします。

2022年に管理人のsumoriが見たライヴのリストです。昨年はインストアなども入れると30本のライヴを見ていました。2021年は15本でしたからちょうど倍です。だいぶ巷のライヴ・シーンも戻ってきた感がありますね。来日公演もボチボチ戻ってきていますが、僕は殆ど見ていません。それほど見たいものがなかったのもありますが、来日公演のチケットが驚くほど高いというのも一因ですね。あらゆるコストが上がる中呼び屋さんも大変なのでしょうが、ここまで高くなると行かなくていいかなと思っちゃいます。特に値が張るのはベテラン・アーティストで、彼らは最盛期はとうの昔に過ぎていますからね。

ストーンズの初来日(1990年)が1万円の大台に乗ったと騒いでいたのが懐かしいです。今はその倍以上もざらですから。

29本のうちZydeco Kicksをなんと6回も見ていました。彼らはヒューイ伝のイベントにも出てもらい世話になりました。彼らのやるヒューイ・スミス、思った以上によかったです。一部メンバーが参加したライヴも含めると8本もキックスがらみでした。打率で言うと3割に近いですw。

あとブルース・カーニバルが10年ぶりに復活したのも嬉しかったですね。同窓会のようにいろんな人と会い、楽しみました。今年も是非やってほしいです。

今年は少しは来日公演も行ってみたいです。お財布と相談しながら。でもクラプトンやジャクソン・ブラウンはパスかなぁ。もっとこじんまりした来日が戻ってくるといいですね。ジョニー・バーギンとかそろそろ来ないかな?前回は2020年春のツアーがコロナで中止になったままですし。

尚、恒例化していた干支ジャケットを探すシリーズは今年はやりません。やろうと思ったのですが、なかなかウサギをあしらったレコード・ジャケットというものが見つからず、断念しました。ウサギならなんでもいいというレベルならできないこともないのですが。miffyやらピーター・ラビットのジャケットをなど並べても面白くないでしょ?少なくとも、僕が好きなアーティストの作品のジャケットでウサギが描かれているものはひとつも思いつかなかったのです。

来年の干支は龍か。もっと難しそう。それはそのときに考えよう。

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2022年にsumoriが見たライヴ
1. 1月8日(土) New Year Special Cajun Session (Zydeco Kicks, Hee Haw Woo Boys, Los Royal Flames) 池袋Free Flow Ranch
2. 2月5日(土) コージー大内(ブルースんどれい上映会+ライブ) 高円寺JIROKICHI
3. 2月6日(日) W.C.カラス 神保町しゃれこうべ
4. 3月6日(日) Mooney & Friends + ナカムラ 神保町しゃれこうべ
5. 3月25日(金) 吉村瞳 吉祥寺Mojo Cafe
6. 4月9日(土) 横浜ジャグバンドフェスティバル 横浜Thumbs Up他
7. 5月1日(日) AZUMI 神保町しゃれこうべ
8. 5月28日(土) Zydeco Kicks 池袋Free Flow Ranch
9. 5月29日(日) TOKYO BLUES CARNIVAL 2022 日比谷野外音楽堂10. 6月4日(土) Nacometers 代官山晴れたら空に豆まいて
10. 7月17日(日) Hee Haw Woo Boys with Madame Hiromi/Los Lejanos de Japon 新橋Aratetsu Underground
12. 7月25日(月) Baby Kingdom 大阪Big Cat
13. 8月7日(日) Mooney(ルイ・アームストロングさんまつり) 新橋Aratetsu Underground
14. 8月20日(土) Zydeco Kicks 池袋Free Flow Ranch
15. 8月25日(木) オーサカ=モノレール 渋谷Pleasure Pleasure
16. 8月28日(日) 高橋大輔/サギ 神保町しゃれこうべ
17. 9月23日(金) ニヒルブラザーズ/リトルシゲルバンド/Joe-Go 北千住Cub
18. 9月25日(日) Wild Chillun 高円寺JIROKICHI
19. 10月4日(火) The Courettes 渋谷タワーレコード(インストアライブ)
20. 10月16日(日) 吾妻光良&牧裕 神楽坂K.WEST
21. 10月29日(土) Conjunto-J/ Zydeco Kicks 代官山晴れたら空に豆まいて
22. 11月1日(火) Beyond出演アーティスト公開インタビュー+ミニライブ(白崎映美/ジンタらムータ/仲野麻紀) 渋谷Li-Po
23. 11月6日(日) 福生ブルースフェスティバル 福生大多摩ハム駐車場
24. 11月12日(土) W.C.カラス+モアリズム 三鷹バイユーゲイト
25. 11月13日(日) Festa In Vinyl 練馬白石農園
26. 11月27日(日) ヒューイ・”ピアノ”・スミス伝出版記念イベント1(藤井康一) 神楽坂K.WEST
27. 12月3日(土) Zydeco Kicks 大阪ハウリンバー
28. 12月10日(土) ヒューイ・”ピアノ”・スミス伝出版記念イベント2(Zydeco Kicks/ニヒルブラザーズ) 中野ブライトブラウン
29. 12月24日(土) リトルシゲルバンド/King Cake Baby/ニヒルブラザーズ 阿佐ヶ谷Oil City
30. 12月29日(木) Zydeco Kicks 池袋Free Flow Ranch

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過去の「sumoriが見たライヴ」
2021年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1958.html
2020年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1921.html
2019年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1875.html
2018年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1817.html
2017年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1768.html
2016年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1718.html
2015年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1663.html
2014年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1592.html
2013年 http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/1488.html


音楽全般 | 02:11:13 | コメント(0)
黒人ばかりのアポロ劇場(新刊紹介)
Apollo

歴史を感じさせる興味深い書でした。黒人音楽のメッカ、ニューヨークのアポロ・シアターで夜な夜な展開されてきた熱いパフォーマンスとそれを楽しむ観客。その様子をアポロを設立したフランク・シフマンの息子、ジャック・シフマンが本にまとめています。毎日現場で劇場を見つめてきた人だからこその本です。

とは言っても新たに書かれたものではなく、もともとの書が出たのは1971年。もう半世紀以上前です。日本では1973年に武市好古氏の翻訳でスイング・ジャーナル社から出版されていたものです。著者も訳者ももう故人ですが、この度土曜社から久々に復刻出版となりました。

古くからの黒人音楽ファンの方の中には「懐かしい」と感じるものでしょう。僕は今回初めて読みました。

アポロの熱気をノリノリな感じで伝えているものかと思っていたのですが、読んでみると思っていたよりずっと落ち着いた深い内容でした。アポロが存在するハーレムという地域の歴史から始まり、その中で黒人のコミュニティがどのように出来上がっていったのか、そしてアポロ劇場という存在が単なる劇場ではなく、黒人コミュニティの中で精神的支柱とも言える特別な存在となっていったことなどが、深い考察とともに語られています。

ジェイムズ・ブラウン、カウント・ベイシー、エラ・フィッツジェラルド、ライオネル・ハンプトン、ダイナ・ワシントンなどなど、多彩な人たちが登場します。

アポロで演奏するミュージシャンたち、そしてそこに訪れる観客たち…彼らは他では体験できない一種の魔力にかかったような体験をアポロでしてきたのだというのです。それがどういうものなのかをシフマンは、冷静な現場の様子の描写、そして現場の人々の心理を細かく分析しながら語ります。

特に心理的なものについては、多分に彼の思い込みで語られている部分もあるでしょう。でも、アポロという世界的に有名な劇場の重みはひしひしと伝わってきます。

細かく深い描写が中心内容なので、思ったより小難しい印象は受けました。それは、翻訳された日本語が古いせいもあるかもしれません。でも、歴史の1ページを語る古典書ですから、それでいいのだと思います。今回の版は、基本的に元の武市氏の翻訳を尊重し、変更は一部表記などしか行っていないそうです。

なお、土曜社版の出版にあたり、吾妻光良氏の解説が新たに加わりました。これはいかにも吾妻さんらしい語り口で面白かったです。

20世紀の音楽史に大きな足跡を記したアポロ劇場。その歴史のページをめくってみませんか?

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書名:黒人ばかりのアポロ劇場
著者:ジャック・シフマン (Jack Schiffman)
訳者:武市好古
原題:Uptown: The Story of Harlem's Apollo Theatre
発行:土曜社
定価:本体1998円(税別)
解説:吾妻光良
編集装釘:濱田廣也(b.room)
仕様:四六判(190 × 129 × 13.8ミリ)|320頁
初版:2022年7月31日
ISBN978-4-907511-96-8
ウェブサイト:https://www.doyosha.com/82-黒人ばかりのアポロ劇場/

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以下土曜社ウェブサイトより

“黒人音楽の殿堂” として知られる、ニューヨークのアポロ劇場は、ブルース、ジャズ、リズム&ブルース、ソウルの世界で活躍するスターを数多く生み育てました。この忘れがたき劇場の物語を、関係者だからこそ知り得る逸話で彩った本書は、黒人エンタテインメントの魅力を伝える決定的な一冊です。笑いと涙と驚きに満ちたエピソードの数々が登場人物たちを生き生きと蘇らせ、読者を魅了します。寺山修司が絶賛した、武市好古による1973年の訳文でお楽しみください。

〈主な登場人物〉
ベッシー・スミス、ルイ・アームストロング、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・エクスタイン、ライオネル・ハンプトン、ルイ・ジョーダン、B・B・キング、テンプテイションズ、マーヴィン・ゲイ、アリサ・フランクリン……

著 者 略 歴
Jack Schiffman〈ジャック・シフマン〉幼少時ラファイエット劇場やハーレム・オペラハウス、そして彼の父フランク・シフマンの経営するアポロ劇場などの楽屋で育った生粋の劇場人。1939年、家を離れウィスコンシン大学へ入学。途中海軍に入隊、コロンビア大学を出向のかたちで卒業。第二次世界大戦後、再びアポロ劇場に戻り父フランクの片腕となり劇場を切り回すが、55年突如フロリダへ移住し農園の経営を始めた。かたわら不動産業、カキの養殖にまで手を出すという多彩な経歴の持ち主。その後、フリーの作家、コラムニストとして活躍した。2009年没。

訳 者 略 歴
武市好古〈たけいち・よしふる〉1935年、徳島市に生まれる。56年から60年にかけて劇団四季演出部に在籍、かたわら岩波映画作品「寄席の人々」「歌舞伎の小道具」を監督。64年から3年間、米ラスベガスでショーの構成および演出にあたる。本書翻訳時は、フリーの映画監督、日本創造企画常任プランナー、日本ルーレット研究会理事。主な作品に「ふたりのロッテ」「陰影礼賛」がある。ジャズメンのリサイタルを構成演出したり、スイングジャーナル誌にエッセイを寄せるなどジャズ界でも活躍した。92年没。


音楽全般 | 13:48:14 | コメント(0)
旧ブログのログについて
Blues Ginza Blogは2022年3月にここに移転してきました。それ以前のログ(2005年8月~2022年2月)をご覧になりたい方は、以下からどうぞ。
http://bluesginza.web.fc2.com/black.ap.teacup.com/sumori/index.html

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